ジョブマーケット2022-23

行動経済学分野のジョブマーケットの傾向

2023年1月6-8日に、アメリカ経済学会が開催されます。

学会中は、アメリカのみならず、世界中の大学・研究所・政府機関・企業が、学会会場のホテルで、一斉に面接を行います。

以下の表は、過去8年間にJOE(アメリカ経済学会の求人サイト)から行動経済学(behavioral economics)に関連した公募を出した組織の数を示しています。今年は、アカデミックとノンアカデミック合計で49の組織が行動経済学に関連した公募を出しています。

米大学
テニュアトラック
米大学
非テニュアトラック
(ポスドク等)
米以外の大学ノンアカデミック
(政府組織・企業等)
合計
2015-16
34
4
10
10
58
2016-17
31
3
9
7
50
2017-18
28
3
21
15
67
2018-19
20
3
19
13
55
2019-20
18
4
24
10
56
2020-21
12
4
19
9
44
2021-22
20
6
14
10
50
2022-23
19
5
16
10
49

テニュアトラックに限ると、今年はアメリカの大学19校が行動経済学に関連した公募を出しています。34大学の求人があった2015-16年と比較すると、かなり少なくなっています。アメリカの大学で行動経済学者への需要が低下している可能性があります。

非テニュアトラックでは、今年も魅力的なポスドクの公募が多いです。以下、行動経済学分野で今年非テニュアトラックの公募を出しているアメリカの大学をリストアップしています。非テニュアトラックの公募のうち5つがポスドクです。経済学でポスドクを雇用する研究予算を持っている大学は大抵トップ大学だし、研究に専念することができる貴重な機会なので、ポスドクはとてもお薦めします。
私自身、カルテックで3年ポスドクをして、American Economic Reviewに論文を2本R&Rしてから、ジョブマーケットに出ました。毎年、ジョブマーケットには、トップ大学から「スター」と呼ばれるPhDの学生が複数出てきます。スターには、すでにトップジャーナルに論文がアクセプトされている人が多いです。そんなスターが溢れるジョブマーケットでアカデミックなポジションを獲得するために、ポスドクをして論文を増やすことは、有効な戦略だと思います。

大学名ポジション
Princeton University講師
Stanford Universityポスドク
UC San Diego – Healthポスドク
UC San Diego – Energyポスドク
University of Chicagoポスドク
University of Pennsylvaniaポスドク

ノンアカデミックでは、以下の9組織が行動経済学も対象にした公募を出しています。サイバーエージェントは毎年JOEに求人を出している数少ない企業なので注目しています。

Microsoftは2015年から2019年まで行動経済学者を対象にした求人を出していましたが、2020年からは出していません。Googleが行動経済学者を対象に求人を出したのは2021年のみ。Meta(Facebook)は2015年、2018年、2019年に行動経済学者も対象にした求人を出しましたが、今年は出していません。Amazon、Apple、Uberは今年もJOEに公募を出していますが、行動経済学は対象にしていません。

Asian Development BankCharles River Associates
CyberAgentDireccion de impuestos y Aduanas Nacionales de Colombia (DIAN)
Federal Reserve Board of GovernorsNational Bureau of Economic Research, Inc.
RTI InternationalBehavior and Inequality Research Institute (briq)
U.S. Securities and Exchange Commission 

まとめ

行動経済学の研究者のキャリアに興味がある方に参考になればいいなと思い、行動経済学分野のジョブマーケットの今年の傾向をまとめてみました。

行動経済学のテニュアトラックの求人が減少し、行動経済学者を対象にした求人が主要IT企業から出ていないという、ちょっと厳しいジョブマーケットになっています。

次のブログでは、今年ジョブマーケットに出ているPhDの学生・ポスドクに焦点を当てて書きたいと思います。